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大阪高等裁判所 昭和52年(ラ)38号 決定

抗告人 井上利和(仮名) 外四名

主文

本件抗告をいずれも棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨と理由は、別紙(略)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

一件記録によれば、当裁判所も原審判と同様に、抗告人らの本件相続放棄の申述は、いずれも期間経過後になされたものであつて不適法であると判断する。その理由は、原審判に記載するところと同じであるから、これを引用する。抗告人らは、民法九一五条一項の「自己のために相続の開始があつたことを知つた時」の解釈を争い、遺産の存在の認識と法律上相続人の地位の認識の双方を意味するというのであるが、右自己のために相続の開始があつたことを知つた時とは、相続の原因である被相続人の死亡の事実を知り、かつそれによつて自己が相続人となつたことを覚知した時と解すべきであり、それ以上に被控訴人に積極的遺産はもちろん消極的遺産が存在することの認識までを必要としないと解すべきであるから、結局、抗告人の主張は採用することができない。

そうすると、原審判は相当であつて、本件抗告はいずれも理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 下出義明 裁判官 村上博巳 尾方滋)

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